About MORIHICO. Vol.09

ひらがなのもりひこ

 和菓子とコーヒー。この組み合わせの至福を知っている人は、そう多くはないだろう。
 コーヒーならなんでもというわけではない。市川いわく、繊細な餡のお菓子には、浅煎りのコーヒーが最高のマッチング。肉料理に赤ワイン、魚料理に白ワインを合わせるのと同じ発想である。まだまだコーヒーで伝えたいことはいっぱいだ。

「昔、森彦にきんつばを手づくりするスタッフがいて、浅煎りのモカと合わせたら、もう、さえずるようなおいしさ!この感動を再現してみたい。和菓子はもちろん、自家製で。機が熟したらぜひやってみたい」。

 昭和の面影を残す森彦、電車通りのアトリエ・モリヒコ、屋根裏のあるプランテーション。次々と話題性のあるカフェをつくってきたが、どれひとつとして同じものはない。次は、手づくりの和菓子を提供するカウンターだけの店があっても、おもしろいではないか。もしかすると、再び茶室へリターンもありかもしれない。入り口には白い暖簾が垂れていて、簡素に「もりひこ」とだけあったら、さぞや粋なことだろう。

 森彦からMORIHICOへとひたすら前へ進んできたが、プリミティブな意味でのひらがなのもりひこへと回帰するのも、自然なことである。ひとつだけたしかなのは、まだ見ぬ「もりひこ」から、未来はすでにはじまっているということだ。

ひらがなのもりひこ ひらがなのもりひこ
ひらがなのもりひこ

Writer: 三枝 史子
Photographer: 佐藤 匠